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254 x 196 mm |88頁|並製本
寄稿:ナターシャ・クリスティア
編集:ヨーグ・コルベルグ、鈴木麻弓
デザイン:中島雄太
ISBN:978-4-909442-31-4
鈴木麻弓は代々写真と深い関わりを持つ家に生まれた。彼女の作品からは、写真との深い結びつきを感じとることができる。写真は個人や社会の表現や解放の手助けとなるものだという信念と知識がそこにはある。鈴木の前作である〈The Restoration Will〉は、2011年の東日本大震災後の鈴木自身の家族についての作品であり、非常に個人的で、強く心動かされる作品だった。
新作となるシリーズ〈HOJO〉も同じような性質の作品だが、その方向性は少し異なっている。観賞者との距離を縮め、写真というメディアを用いて、自らの人生体験と身体をインスピレーションとした個人的なナラティブを生み出している。鈴木が〈HOJO〉のシリーズに取り組み始めたのは2020年で、ちょうど鈴木が不妊治療を諦めた後だった。治療をやめようと思ったときに、二本足の人参や変わった形の大根など市場で売れ残った野菜をふと見た鈴木は、その姿に自分と似たものを感じ、それらの野菜や自分自身のポートレートを撮影する。写真やソノグラム、その他のイメージを用いたこのシリーズで、鈴木は自らの体験を作品化している。それは、女性の身体にあらかじめ約束された複雑な可能性をめぐる旅であり、鑑賞者はその旅を追体験する。
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鈴木麻弓
1977年宮城県女川町生まれ。2001年日本大学芸術学部写真学科卒業。ヴィジュアルストーリーテラーとして、個人的な物語を通し作品を生み出している。1930年に祖父によって創業された写真館を営む家庭で18歳まで育ち、日本大学芸術学部写真学科で写真を学んだ。卒業後フリーランスとして、ポートレートを中心に活動。2011年3月11日、東日本大震災が発生し、故郷の宮城県女川町が津波で破壊され、両親が行方不明となった。以降、故郷へ足しげく通い、地域の人々の前に進む姿を記録し続けている。2020年より、自身の不妊治療の経験を描いた新作シリーズ〈豊穣(Hōjō)〉の制作に取り組んでいる。2017年に自費出版した『The Restoration Will』で、Photobooxグランプリ受賞(イタリア)、 2018年PHOTO ESPANA国際部門・年間ベスト写真集賞(スペイン)など、欧州の写真アワードで大きく評価された。主な展示に「あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17」(東京都写真美術館 2020)などがある。